
スーパーバイザーが言っていたこと
『トラウマの治療には往路はあっても、復路が難しい』
復路とは、『どう生きるか』を模索していく段階です
往路は『虐待者からの影響をとる』のがメインですが
その後、途方に暮れてしまう方は本当に多いのです
そのシリーズとして
欲望について、今回は書きます
人は自分の欲望を分かっているようでいて
実際にはほとんど触れていません
欲しいものがある
やりたいことがある
そう言葉では言える
でも、その奥にある
本当の欲望に触れた瞬間
人は戸惑い、そして多くの場合引き返します
欲望は頭で考えるものではありません
まず身体に出ます
例えば
胸の奥がざわつく
呼吸が少し浅くなる
お腹のあたりが熱を持つ
背中がわずかに緊張する
あるいは
何かに強く引かれる感じ
吸い寄せられるような感覚がする
これが欲望の入り口です
実際の臨床でも
クライエントが欲望に触れる瞬間は
必ず身体に現れます
ある人は
仕事の話をしているときは淡々としているのに
本当にやりたいことに少し触れた瞬間
急に呼吸が浅くなり
胸を押さえて黙り込みました
本人は
よく分からないと言っていましたが
身体は明らかに反応していました
また別の人は
好きな人の話をしているとき
笑いながら話していたのに
ある一点に触れた瞬間
急に視線が揺れ
言葉が止まり
そのあと、なんか怖いと言いました
さらに別の人は
やりたい仕事の話をしているとき
身体が前に出るような感覚があると言いながら
同時に
足がすくむ感じがすると言いました
進みたいのに止まる
まさに欲望に触れた状態です
重要なのは
この段階ではまだ言葉になっていないということです
何が欲しいのかは分からない
でも確実に何かが動いている
この
分からないのに動いている
という状態こそが欲望の特徴です
ではなぜ人はここで止まるのか
それは
欲望に触れることが
単に何かを欲しがることではないからです
欲望に触れるということは
『自分が何に動かされているか』を知ること
そして
自分がどこに向かってしまうのかを知ることです
ここに怖さがあります
欲望は必ずしも
社会的に整った形ではありません
綺麗でもないし
正しくもないのです
時に矛盾していて
時に破壊的です
実際に
優しくあろうとしてきた人が
強く拒絶したい感覚に触れることもありますし、
ちゃんとしていたい人が
全部投げ出したい衝動に触れることもある
人を支えたいと思っていた人が
本当は誰にも関わりたくないと感じることもあるのです
その瞬間
人は止まります
見たくない
触れたくない
(だって、それは今までの私と違うから・・)
と
そうやって
欲望から距離を取る
しかしここがポイントです
欲望は消えることはないのです
見ないままにしても
身体のどこかで動き続ける
そして
別の形で現れます
例えば
理由の分からないイライラ
特定の人への強い反応
説明できない疲労
臨床では
なぜか同じタイプの人にだけ強く反応してしまう人がいます
話を聞くと
その相手が何かをしているわけではない
しかし身体は強く反応している
その奥を見ていくと
自分が抑えてきた欲望の方向と
相手の在り方がどこかで重なっていることが多い
つまり
触れなかった欲望が
他者を通して現れているのです
ではどうすればいいのか
欲望をコントロールすることではありません
まずは
身体に出ている反応をそのまま感じること
胸のざわつき
お腹の熱
引かれる感覚
それを
すぐに意味づけしない
(もう本当にここ大事すぎる)
言葉にしない
ただ体感を感じるのです
良い悪いで判断しない
ただ
ああ動いているな
と見る
大事なのは待つ身体です
上手に待てればすぐ出てきます
それだけで、自然に、
まるで『あぶく』のように、ポコっと体の奥から出てくるのです
欲望は
従うものでも
抑えるものでもありません
知るものです
そして
知った上でどう扱うかを選ぶ
この『選ぶ』という時に立ち上がる感覚、
それが『主体』です
主体は、強くもなく
オロオロするものです
そしておっかなびっくりなものです
私自身の欲望は
まるでモグラ叩きの、モグラのようです
どんなに誤魔化しても、他のもので満たそうとしても
どこからかピョコっと顔を出す
そして、私はモグラ叩きゲームの如く
ハンマーをもって、欲望を今は抑えたくなります
{ちょっと待って、もぐらよ 今は出ないで
私は〇〇になってしまう}
欲望に触れることは怖いものです
なぜならそれは
自分の輪郭が変わる入り口だからです
しかし同時に
そこに触れない限り
自分がどこに向かっているのかは分からない
そして、それを阻むものもあります
・・・周囲の助言(と見せかけた、変わらないでというメッセージ)だったり
自分の中の罪悪感だったりします
ちなみに、私の欲望ですが
まったくもって 想像の斜め上を行きました
自分もカウンセリングという職業柄、
またスーパーバイザーの先生たちからの応答から
なんとなく『こっちの方面なのか・・?』
と思っておりましたが
大どんでん返しだった
そして、この欲望を満たすような生活を果たして
私は進めるのか・・・と
でも知ったからには
進みたくなってしまう
それが欲望の性質です
クライエント様の中でも
欲望を知り、そしてそこに向かって行かれるのですが
なんというか
普通の、一般社会の秩序とか、幸せとか
今まで『良い』と思わされてきたものを追いかけてきたものが
実は、ダミーだったのかも・・と
自分で、自分にびっくりされている様子がよく見られます
そして『想像もしなかった』とおっしゃります
少しだけご紹介するとしたら
『私は寂しがりやなのかと思ってる』と仰っていたクライエント様。
ところがどっこい
人と関わる仕事がしたいと、多くのことに挑戦してきましたが
そして結局『1人の生活ってサイコー!!』となってしまった
その人の欲望の一つは
『誰にも縛られないこと』があったのです
欲望は人間を壊すものではありません
あなたを動かしているものです
怖さがあっても
ほんの少しだけ触れてみる
触れてみると、なんとも言えない充足感というか
どっしりとした体幹を感じられます
まずは、身体に起きていることを見てみること
そこからすべてが始まります







