孤独な獣

トラウマを負わせる側というのは
えてして(悪いことをした)などの自覚とかが無いことが多いのです

よく『やった方は忘れていて やられた方は忘れられない』と言うが
まさにその構図がトラウマの治療の中でもよく出てきます

この加害側(あえて加害と書きますが)の『無自覚さ』が
トラウマを負った方の感情を逆撫でして
二時的なトラウマを負わせる場合があります

忘れられるくらいの『大したことではなかったのだ』ということ

自分にとっては
とても重大な出来事なのに
相手は忘れている

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私は母親に一言、謝ってもらえたらよかったのだと
いまでも振り返って思うときがあります

私が自分の『何かおかしい感覚』に気づいたのは
あるときに受けた 整体のあとからでした

長年の身体の固まりと
首と肩の凝りと
頭痛は尋常ではない痛みがあるもので

だから腕利の整体の先生に頼んでいたのだけれども

ある日
ものすごく『入った』時があったのだ

背骨のきわの
筋肉と神経のところに
彼女の指がゴリっと入り

私のその『すじ』みたいなものがガランとズレた時に

いきなり
波のように 怒涛の記憶が戻ってきて

その場で私はいきなり涙が止まらなくなり
パニックになってしまった

記憶が次々と走馬灯のように浮かんでは消え
また浮かび・・と

目の前に おかしいくらい
画面が切り替わり

それとともに
その時の感情やらが蘇る

さっきまでリラックスして整体の施術を受けていたのに
いきなり世界が暗転したかのような体験が起きたのだ

記憶が蘇ると言うことは
そんなに良いものではなく、むしろ苦痛でありました

悔しかったこと
悲しかったこと
恐怖
絶望
苦しみ

それがひっきりなしに襲ってくるので
半年くらいは
もうその記憶の戻る感覚(フラッシュバックですがその時はその言葉も知らなかった)
に翻弄されていました

車の運転中にもくるものだから大変でした

 


なんとかして
この記憶の入れ替わりをとめたくて

まるでフラッシュカードのように
次々と入れ替わるものだから

それを止めるべく

母に謝ってもらおうと思ったのだ

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その頃の私と母親の関係というものは
特に波風が立つものではありませんでした

母親は
私の子供たちに執着の矛先を向けていたし

私はもう抜け殻のようになっていたので

喧嘩どころか
寝込む毎日だったので

私の
『一言でいいから、殴ったこととか謝ってほしい』との訴えに
母親はびっくりしたと思うのです

 

そして
母親は言い放ったことは

 

『覚えてない』『ぐちゃぐちゃうるさい』

 

 

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こんなに毎日苦しい思いをして生きているのに

その発端となった母親は
自分の行いを全く覚えてないどころか
『うるさい』と言う

ということに
私は心底驚いたとともに

『母親は覚えているはず』
『悪いと思っているはず』

という幻想(妄想)をかなり大切に自分で握って生きてきたのだと思い知りました

この加害側の記憶の改竄(カイザン)というものは
結構よくカウンセリング中でも出てきます

カウンセリングには加害側のかたがたもいらっしゃるのですが
大抵の方は
『自分の中になる獣性』とどう折り合いをつければ良いのか
ということを課題としています

しかし自分の中に
他人を攻撃する部分があるとは
ほとんどの方が自覚していないことが多いです

また攻撃するということは
自分が優位に立ったっような感覚を催すので
『快感』の感覚が刺激されてきます

この快感の感覚は、依存を引き起こします

むしゃくしゃすることがあったら(大抵のむしゃくしゃすることとは自分の尊厳が傷ついたとかなので)

手っ取り早く
そのむしゃくしゃすることを癒すためには

ひとを攻撃して
『自分の優位性を確認する』ということをします

それは、いわば
確認行動でもあり

依存症の始まりでもあります

自分が優位に立っているという確認には
必ず周りに『自分が攻撃できる人』を配置しておかないとならないのがポイントなので

要は加害側の獣性を帯びた人というのは
いつでも『攻撃できる人を欲している、もしくは飢えている』ということなのです

 

なので
私がカウンセリングをしている中で
いつも思うのは

『一番孤独に弱い人というのは獣性を帯びている加害者として生きてきた人』

だなぁということです

この方々は本当に弱い

そしてそれこそ喉から手が出るほど
他人を欲していたりします

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法治国家としての現代の日本では
獣性を帯びて加害側の感覚を持っていると

人からは嫌厭されるので
こういう人たちは
なんとかして
集団に溶け込もうと必死です

けども自分の中の
『人を攻撃したい』『人を囲いたい』『優位に立っている感覚を感じたい』
というものを押さえ込むことが難しいので

いわゆる導き系(教祖とか占い師とか先生とか 現代ならコンサルとかカウンセラーとか)になりがちなのがめんどくさいところです

加害側の人が
実は導き系の人だったということはとても多い

『あなたのためを思って言います』とかは
危険ワードだと思っていい

コントロールして
実は
裏で攻撃していたり
ドツボのハマらせるようなことをしている

加害の人が
自分の獣性に気づくというのはかなり難しいですが
カウンセリングで結構がちで正面からその課題が出てきたりした場合は

ご本人は大変そうですが

でもそれが乗り越えられると
全くの別人のようになられていきます

それこそ憑き物が落ちたかのような変わりぶりです

それこそ周りに恵まれるようになる

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けど
私は母親に対しては
いまだに時が止まったままにしてあります

あの時の母親のあの顔は
人間ではなく
獣でした

そして今も目を瞑ると
あの獣のような顔が ぼんやりと暗闇のなかに見えるのです

(蟲の顔に見える時もあり)

   

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