六本木の魔法使い

『転移』という言葉があります

今回は心理学の世界で用いられる『転移』についてのお話も少し混ぜつつ。

身体に生じた病理が場所を移動した・・などではございません

『転移』という概念といいますか、転移の現象はかの有名なフロイトが
カウンセリング中に発見したものであります

『クライアントが過去に感じた感情や対人関係のパターンが
治療者とクライアントの間で現れてくること』を指します

反対に『逆転移』という言葉もありまして
それは治療者、つまりこの場合は『乙原、わたし』になりますね

わたしがクライアント様に対して生じる感情が『逆転移』になります

カウンセリングでは
この『転移』と『逆転移』をうまく利用することが
カウンセリングの進捗や方向性にとても良い作用を及ぼすと言います

『転移(クライアント⇨治療者)』は
クライアントにとっての重要な他者(ほとんどは父親と母親)に本来向けるべき感情が
目の前のカウンセラーなどに向けられて
『幼少期に解決すべきだった問題を、今、目の前のカウンセラーに向けて再現している』という
ことになります

親密さや好意を向ける場合もあれば
怒りや疑いなどのネガティブな感情を向けてくることもあります

人の感情というのは
複雑に絡みあって表に現れてくるものですが

この複雑になったわけは
カウンセリングの時に、治療者に向ける感情の振れ幅や種類を注意深くみることによって
なんとなくご本人の中でも整理されてきます

例えば
幼いころから親の愛情を十分に受けられず育った人が、
大人になって鬱や人格障害や不眠などを患って
カウンセリングや病院などを訪ねたと仮定します

すると医師やカウンセラーは患者の話を聞いてくれ、
受け止めてくれ、優しくアドバイスします

すると、ここで患者の「愛されたい」感情が爆発するのです

昔、親から十分に与えられなかった愛情を、援助者に要求するのです

これが『転移』の代表的な表れの一つ

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これは何も
クライアントが、医師やカウンセラーとの間で生じるだけではありません

パートナー間同士でも
実際このような現象は見られます

共依存とかにも関わることなのですが

けどそれはまた別のお話なので今は置いておくとして。

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『愛されたい』は割と多くの人が持っていらっしゃる感情です

これは暴走しなければ
この『愛されたい』を持っているとチャーミングだし
楽しいし、他者と色々なことを楽しんだりもできるし

持っているといい感情ではあります

コミュニケーションには大事な感情ですね

だからカウンセリングでも
『暴走しないように、でも無くす訳ではなく、それなりに温存しておくといいですよ』
というスタンスでやっております

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そして転移の中でも『陰性転移』と言ってネガティブな感情を持つという表れの時。

怒りとか
疑いとか

といういう時の感情も
大事な感情なので
しっかり共有すべきものとしてカウンセリングをしていきます

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しかし

わたしの中で注意している感情がありまして
それは
『導いてほしい』とか『依存したい』という感情

これは結構扱いを注意深くしております

どうしたって
{カウンセラーという立場}と{クライアントという立場}だと
『教える』とか『導く』とかいうことに直結しやすく

それは依存関係になりやすいのです

子供はもちろん幼少期は
親に導いてもらいたいものだし
正解を教えてつづけてほしいものですが

それは健全な関係だと
思春期にその関係性から脱却します

『親もそんなに完全ではなかったんだ・・・』と幻滅するという体験が非常に大切で

それを経て

『自分の人生は自分で決定し続けていくものなのだ』

と『親を心の中で捨てる』という大切な『親ばなれ』をすることなのですが

いつまでも
親を欲しがる、つまり『導いて欲しがる』という感情は
なかなか決別することが難しい感情です

これがうまくいかないと

『占い依存』とか
『宗教依存』に近いものになってきてしまいます

自分の『意思決定』を他人に委ねるということは
楽だし
一見安心だし
自分で責任を取らなくていいから・・
と考えがちですが

実際は窮屈でオドオドして、
いつその『導いてもらえる人』から捨てられるかと恐怖を持ち続けることになってしまい

それがまた共依存の温床になるのです

『自分1人で、とりあえずなんだって生きていける』という
感覚は、実際そのような人と
出会うことで養われていきます

たくましい人と出会うことが大切です

そのたくましい人は
何者にも囚われずに、飄々として、ぶっきらぼうで
めんどくさがりやですが

それは『他人を背負うと自由ではなくなるから』
ある意味距離を取るような振る舞いなのだなと見ていて思います

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そうそう今日、六本木を朝歩いていたら
ものすごく長身の外国人の方が大きな『つづら(リュックみたいな箱)』を背負って
とても長い杖を片手に持って本屋で道を尋ねておりました

映画に出てくる魔法使いかのような風貌といで立ちで

つい聞き耳立てたら
どうやらこれから歩いて四国に行くのだそう

携帯も何も持っていないから
道がわかるところまで
ガイドしてくれと、頼んでいたのだけれども

そんな人生もいいなあと
思いました、わたし。

人生をずっと歩き続けるというのもいいですね

   

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