羽からの囁き

ある方のテーマは『自分の人生を生きたい』でした

主訴としてこちらのカウンセリングにいらっしゃった時、
その方は身体がとても細く
目の動きは宙を漂い
同じ言葉を何回も繰り返す方でした

笑い方は顔に膜がかかっているようでした

どことなく芯がない感じで
心もとなく
吹けば、吹き飛ぶような雰囲気がありました

その方はまるで鳥籠の中の鳥のようでした

観賞用に育てられた鳥は、とても無防備で、なぜかとても痛々しい雰囲気がありました

観賞用なので
その方は自分がどう見られるかということにとてもこだわってしまいます

観賞されて
羽を少し広げてみたり
ピイロとさえずってみたりすることが良ければ愛でられると言った学習をしてしまったせいか

どうしても観賞してくる側の目線を気にしてしまいます

毛繕いや
いつ、どうやって寝るか
何を食べるか などには、気を向けることはできるのですが

いかんせん、それは鳥籠の中でのこと

鳥籠の中でなら
その方は何となくは生きられます 

どうやら自分の仕事は『毛繕い』だと思っているふしもあるようです 

外の世界は色々な動物もいるので鳥籠から出られる気はしないのです

愛でられて観賞される鳥は
そのうちに飼い主が老いてきたことに気が付いていきます

いつまでも自分が『愛でられること』で生きていけるのかと
少しずつ不安が出てきます

鳥が、ふと鳥籠の外を見ると

色々な動物が噛みつかれたり
噛んだりするのが見えますが

しかし鳥籠の中の鳥は、『戦う』という体験も思考もしたことがないので
ただただ怯えて余計に縮こまるだけです

『怖い 怖い』と余計に羽を畳んで
見ないようにします

そんな時、ふと鳥籠の中の鳥は
自分が『檻の中』にいると
自分を客観的に見られるようになります

案外、外の動物立ちが『噛んだり 噛みつかれたりする』していても
それなりにバランスをとって生きていけているのでは・・
・・と眺めていて思うようになります

尖った牙を持つ生き物や
硬い甲羅を持つ生き物もいたりして

それが不思議で絶妙なバランスのもと生きていて
生態系の一片を支えているのです 

それを眺めていた鳥は、少しずつ羽を動かしてみたり

自分が逃げたり
戦ったりするような場面を想像してみます

けれどもそれは鳥籠の中での想像のことだけで

実際に痛みを感じたりはしていないのです

鳥籠の鳥は
『外には出てはいけないよ』と教えられています

外にはものすごく怖い生き物がたくさんいるのだよ
と、言い含められて生きてきたのです

なのでその『怖い生き物とのやり取り』を想像だけして生きてきています

さも、怖いのだろう 
自分では立ち向かったりなんて到底できない 
だって尖った牙もないし、硬い甲羅も持ち合わせていないもの・・

と思っているのです

ある日飼い主は、鳥籠の中の鳥がいつもと違う羽ばたき方をしているのに気が付きます

まさか
逃げようとしているのではあるまいか と 

観賞用で愛でてきた鳥が
我が元から逃げるなんて考えもしなかった飼い主がいます

飼い主は『鳥を所有している』気持ちでいます

鳥というものは『所有することが愛なのだ』と飼い主は思っているのです

お世話をすることが愛なのだと思っているのです

まさか
鳥が一羽で空を飛んでいけるなんて思ってもいません

所有こそ愛
世話をすることこそ愛・・・と思っているのです

 

鳥には羽がありました 

羽は生まれる前から
鳥に備わっているものとして在りました

大いなる存在が
『鳥には羽を』と言った時から

羽は、鳥を鳥と『たらしめる』ものとして在りました

鳥は羽があるからこそ鳥なのです

 

羽は鳥に囁きかけます

『羽ばたいてみたい』

身体の一部の羽は、そう鳥に囁き続けます

『そんなの無理よ』
と鳥は羽にいいます

私には牙もないし 甲羅もない 空がどんなとこかもわからないし
ましてや
飛ぶことだってしたことがないのだもの・・と縮こまります

羽は囁き続けます

羽があるじゃないか
私を広げてみておくれ

けども鳥は首を振り悲しげにいいます

私は世界を知らないのよ
この鳥籠だけは安全で生きてられる 

鳥は自分の羽のいうことを信じられないのです

羽はそれでも囁き続けます

私たちは飛ぶために生まれてきたのだ
鳥が鳥であらしめるために生まれてきたのだ

鳥は飛んでこそ鳥なのだ
羽を使ってこそ世界を体感できるのだ

世界を知らない鳥はいいます

羽を使うことなんてできない
飛んだことなんてないもの

 

さて
ここ最近のクライアント様がたのブームは『巣立ち』でした

飛べない
飛んだことがない
飛ぶのが怖い

と言ったクライアント様が多かったです

けどやっと自分の羽の使い方を体得した方々も多かったですね

鳥なのに牙を欲しがったり、甲羅を欲しがった方も多かったですが

頼れるものは
自分の羽のみだと分かった瞬間に

大きく強い風がどっと吹いてきたようでした

そうしたらば
どの方も割と高いところにまで跳べていってしまい
見上げる私も晴れ晴れした気持ちです 

鳥なのに
肉食になりたい!!なんて方もいましたが
結局消化できるのは鳥の食べ物だけでした

どうか
ご自身の羽からの声をよく聴いてくださいませ

世界を体験させてくれる『羽』は
ご自身が思っているものとは違う『羽』かもしれないですが

どうぞ蔑ろ(ないがしろ)にしないでくださいませ

羽はいつでも囁いています 

   

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