怒りのタネ

アンガーマネージメントを目的にカウンセリングを受けられる人も多くなってきました

怒りをコントロールするスキルが欲しい
とのご要望でのカウンセリングなのですが

怒りとは簡単に『無くせば良い』というものではありません

 

怒りは
私たちの解釈としては『表現』になります

その表現は周りを驚かせてしまいますし
周りを悲しませることにもなってしまうし
周りから理解されにくい

周りはなかなか
その怒りを汲んであげることは困難なので
距離を取られる場合も多く
ひどい場合には、怒りをもつ方ご本人を孤独にさせてしまうことがあります

怒りとはよく『二次感情』と言います

何かの感情を感じることを避けたいがために
『怒り』で周り(や自分)をコントロールすることで
自分の感じたくない感情を感じないようにする

などがよくあります

 

怒りは、1人で居る場合にも発生します

自責などは自分への怒りでありますし
自己嫌悪なども、大きな意味では自分の行いへの憎しみなどになります

ただ、アンガーマネージメントといっても
『怒りをコントロールしましょう』だけでは
ご本人にさらに我慢を強いてしまうことになることが多く

結果、破壊衝動にまで発展してしまうということも少なくありません

 

ではいったいどうすれば良いのでしょうか

それには『観察』が不可欠です

怒りの状態というのは
ある意味、もう心身共に、ものすごく合致している状態です

心や気持ちが、もう煮えくりかえるという状態に
身体も付随して、『相手にわからせる行動を取りたい』という気持ちが
身体から噴き出るくらいになります

 

カウンセリングでは
その怒りの場面に戻ってもらって
何を感じていたのか・・をじっくり聞いていき

その怒りの素となるものを抽出することをしていくのですが

 

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(特定できないように出来事などは変化させて
書かせていただきます)

ある男性の方が『旅行で渋滞にハマってしまって爆発的に怒り狂ってしまった・・』
と相談に来られました

 

このかたは普段は仕事で
ものすごく苦しい思いをしていて
学歴にコンプレックスがありました

学歴にコンプレックスがある・・ということは比較的早い段階で
言葉にできたのですが

『父親』として行動すると
どうしても威圧的になり、妻や子供の行動が思っていたことと違う反応をされると
爆発してしまうというのです

 

車で行動されることが多いご家族なのですが

妻も子供からも『旅行のときにイライラされるくらいなら旅行自体を中止したい』
と申し出があったそうなのですが

それはそれで『見放された気分』になるとおっしゃり

家族には『どうせ俺のことなんて嫌いなんだろう』と激昂してしまったというのです

 

この家族の対応は
男性の怒りがまだ言語化できていない段階では
『焼石に水』どころか『火に油を注ぐ』のようなものです

この場合の男性も
『どうせ俺なんか』『せっかく俺がやってやってるのに』と
家族に言ったというのです

すると家族の方も罪悪感を感じ始めて
わざと旅行を楽しいように盛り上げなくてはならない・・だとか
イライラし始めたら言動に注意しなければならない

『楽しむ旅行』どころか『機嫌を取るための旅行』になってしまうのです

 

この男性の怒りは
いったいどうすれば良いのでしょうか

 

男性に対して『どうして旅行に行きたいのか』にお尋ねすると

『休日くらいは家族に楽しい思いをさせたい』とおっしゃいます

でもそれが
渋滞や突発的なアクシデントがあると
途端に自分の中に怒りが込み上げてきて台無しにしてしまうというのです

 

この場合の男性の目的は『楽しい思い出を作りたい』です

では『どうして楽しい思い出を作りたいのか』とお尋ねすると

ご自分の生育歴のことについてのお話を始めました

 

この男性の父親は、ものすごく頑固で意地っ張りで
家族のことを省みずにいつも仕事ばかりに明け暮れていた

自分と母親は、父親のことを半ば軽蔑しており

母親は父親のことを『あんた(この男性のことです)さえいなければ別れていた』と
いつもいっていたというのです

 

では
『父親のようにはなりたくない・・との思いから
旅行で家族と楽しみたかったのですか?』
とお尋ねすると

『そうなのです 自分は父親のようにはなりたくないし
妻と子供から、軽蔑されたくない』

ぽつりぽつりと話されました

 

『だから楽しい旅行というのにこだわるあまり
それをイメージしすぎて
少しのトラブルも許せない』

とおっしゃるのです

 

ここまで来ればあと少しです

『完璧な旅行しか楽しめないのですか?』とお尋ねすると

『確かに完璧な旅行というのを求めると
楽しめなくなっているのはわかります
・・・なんだか仕事をしているみたいで』

と続き

 

『自分には学歴もないし誇れるものが何もなくて
だから家族だけは自分の味方でいて欲しくて
その味方でいてくれる場面をなんとか作ろうと旅行の時は
特に力が入ってしまっていたのかも・・』

『でも家族は、旅行はハラハラすると言っていて楽しめないと言っていたけど』

『そうですね』

『家族が味方でいて欲しいなら、旅行ではない場でも
いくらでも見つけられそうでは・・?』

となると

カウンセリングの場では色々な『手段』が浮かびます

 

『家族が楽しいことを、まずは自分から尋ねてみるのも良いかも』
(旅行なら楽しいだろうと勝手に決めつけていたことにも気が付かれ)

『家で一緒にゲームをしようと誘われていたこともあったんです』
とか

『たまにはショッピングに行きたいと妻に言われてたんです』

とか色々な案が出てくる

 

でも、ここで立ちはだかるのが『男性の父親』です

『父親というものは、家族を引っ張っていくものなのでは・・』
と自分の父親像から離れられないのです

 

でも、その時に思い出していただきたいのは
子供の頃の自分です

父親に逆らえず、いつも顔色を伺っていた自分

その子供の頃の自分は何をして欲しかったかというと

やはり一緒にゲームをしたり
何気ない、他愛のない話をしたり
お母さんと仲良くして欲しかったり
たまには近所に虫取りに行ったり
小さなお菓子を買ってくれたり

などと日常での『平穏』を父親には求めていただけで

決して非日常の旅行や
教育などを求めていたわけではなかったのに・・

と過去をポロポロ思い出されるのです

 

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『なるほど』と男性は言います

『尊敬されて威厳があり、家族を従えるのが父親なのかと思っていました』

 

もっと
弱くていいし
自分が子供の頃にして欲しかったことだけで充分なのですね

わかってから
男性は怒りの質が変わったと言います

『それまでは『父親は完璧であるもの』だと思っていたけれども
でも、ぼんやりしていたっていいし
弱みを見せても良いんですね』

と肩の力が抜け帰っていかれました

 

次のカウンセリングでは
家族から恐々と扱われていたのが
家族も自然体に接してくるようになったと仰り

なんだか喧嘩が減りまして、寝つきも良くなりましたという副産物まで。

 

そして
『仕事でも『肩肘を張らなくても良いか』と思うようになりました』

なんでかと言うと
『自分は大切に思われたいんだな』という自分の本当の望みのようなものが分かったから
無闇に周りと競合することが意味がないなとわかり
敵を作ることを敢えてしなくて良いのだな』

・・と分かったとおっしゃるのです

 

 

かなり端折って
ここで書かせていただきましたが

怒りの素は
生育歴からのものをかなり含んでおられます

『こうであらねばならない』と学習されてしまったものが
その通りにならないと

『こうあらねばならない自分』とかけ離れたら
『価値がない自分』になるのでは・・と恐怖感を伴うので
一生懸命に、決めたルートに戻さないといけないというために
出てくるのが怒りであります

その怒りは脅迫的でもあり
『見捨てられ』も含んでおり
ご本人もかなりのダメージもあり・・と大変なのです

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アンガーマネージメントは私自身も経験がありますが

やはりこれに対応する治癒の方法は
カウンセリングでしっかりと『聞き取る』ということをすることかなと思っております

しかしご本人も
自分の中の『恐怖』を言語化しなければならないので
かなりの負担がありますが

でも、この『恐怖』は言語化して
自分自身でしっかりと外在化して眺めないことには
ずっと心の中で居座ります

 

 

ちなみに私の中の『恐怖』の一つは
『命令される』ということでした

人からお願いや頼み事をされると、断れなくて
もう内心大変だったのですが

 

でもそれも原因がありました

小さな頃に親から
『あなたは〇〇でありなさい』と言われて
それにそぐわないと
ものすごい折檻と暴力がありました

だから、大人になるにつれて出来ることも増えて
頼み事やお願い事を気軽にホイホイと請け負っていたのですが

相手がどんどんつけ上がってくると、もう大変に内心で怒りくるう

でも断れない

 

これを心の奥底に潜って行ってみると
見えたのは『親の軽蔑とため息の顔』がありました

軽蔑のまなざしを向けられることが怖くて
私は、なんでも引き受けていたのだと理解した時に

今は、軽蔑されることよりも
自分の身体を守ることの方が大事よね・・と
自分で決意したことと

また、軽蔑の眼差しで、人を操作する相手と付き合っても仕方ないよね・・

と思い
怒りの一つとさよならできたのです

   

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