自分を迎えに行く

『物語』のちから

ナラティブセラピーという言葉をご存知でしょうか

 

ナラティブとは
直訳すると「物語」という意味ですが

物語の筋書きや内容を指す「ストーリー」とは意味合いが違って

ナラティブは『私たちが一人ひとりが主体となって語る物語』のことです

私はこのナラティブセラピーが大好きでした

 

自分の物語を語る上で欠かせないのは
その物語を『聴く人』です

物語というのは
語って・・だけの一方的では動作では成り立たない

その物語の聴き手が必要であり
(もしくはその物語の本を手に取って表紙を開いて読む、読み手かもしれないけれども)

1人では成り立たない世界が
ナラティブセラピーの世界であります

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私が精神科医の先生に一番最初に教わったのは
『物語のちから』を信じることでした

精神科医なんだから
薬を処方して
診療時間なんて5分くらいで・・と思っていたのだけれども

先生は違いました

時間はたった10分程度でも
その患者さんなどの一人一人の人間が背後に持っている『物語』を読み取る技を教えてくれたのです

人の『物語』を読み解くにはかなりの時間と訓練が必要でした

現代人というものは
相手の物語を読む前に

相手の身分や性別や出自や身なりや風貌に左右されて
相手の物語を聞き漏らしてしまうのです

 

実は
物語は
その人の背後から語られます

その人自身の口から出る言葉ではなく

背後から
大きなバックミュージックのような雰囲気で語られるのです

その『雰囲気』を
私たち聴き手はじっと耳を傾けて聴くのです

 

さて
この物語は
ハッピーな話ではほとんどありません

どちらかといいうと『独白』のようなものです

そしてその『独白』は
つらつらと喋る訳ではなく
端的でシンプルな、『言葉』を述べられたりします

目の前のご本人は一生懸命に色々と話してくれますが

背後のその物語は
挿絵の一枚をずっと見せていたり、音楽を聴かせてくれる時もあります

 

そして
じつは
ご本人の語られるお話と
真逆の物語を背後が語る場合が多いのです

目の前の人は、とても文句を言っていたりするのだけれども
背後の物語は
俯いて涙を流している絵巻物が展開されていくなんてこともあるのです

誰かの悲しみを語らいながら
背後の物語では悪魔が笑っていたりもします

目の前の人は
悲しみの言葉を言っているのに
じつはセイセイして晴れやかになった!なんてこともある

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カウンセリングでは
その背後の絵巻物語を、ただ映画を見るように眺めていくということをしていたりします

こちらは
少し疑問に思ったことを質問したり
軌道修正をしたりしますが

そうすると
次第に
その語っているご本人が
ポロポロと
自分の心からでた言葉を口にする瞬間がきます

そうすると
その背後の絵巻物語がいきなり鮮やかな屏風のような広がりを見せるのです

そうすると
その物語には善も悪もない
白も黒もない
荘厳で畏怖すら感じるような静けさみたいなものが展開されてきて

それを語っておられるご本人も自分で自分に癒されていく・・といった出来事が起きたりするのです

ご本人のその時のお顔は
なんと言うか、
『語らいびと』になるのですが

自分であって、自分ではないような

でも自分のことを話しているみたいな

不思議な空間がそこに出来上がるのです

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少し注意すべきは
『自分のフリをして誰かが自分のことを喋る』という時です

私の知り合いのカウンセラーは(歯に絹着せぬ物言いですが)
その方、ご本人ではない存在が喋り始めると
『急に興味を失う』と言っていました

確かにそれ、言わんとするニュアンス、わかるのです

何というか
頭に内容が入ってこない感覚に、こちらはなるのです

だから
そういう時は
質問などをして『刺激』をして
偽物ではなく、ご本人が語られるようにします

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自分のことを
他人のように語らえるようになると、人は自然に心が回復してくるようです

いつの間にか
自分を労っていたり
慈しんでいたりできるようになります

自分の物語なのに
どうしてこんなに主人公を貶したり貶めたりしていたのだろう!

自分のことを客観視し始めます

またすごく自分は強がりを言っていたのだ・・と気づく方も多くいらっしゃいます

弱みを見せるとやられるような世界で生きてきた方なんかは
いかに自分が自分を守るために虚勢や虚像を作ってきたかと知り
それに気づいた瞬間
自分からその鎧のようなものが剥がれていくなんてこともよくあります

よくみなさまおっしゃるのが
『自分にヒビが入り、パラパラと何かが剥がれていった』
とおっしゃいます

自分の柔らかな心に触れると
どのかたも懐かしい感覚になり
かつての自分と再会するということが起きます

それを私は
『自分を迎えに行く』と表現します

自分との再会は
片われと会ったかのような感覚をもたらします

そして、絶対に自分を裏切らない『自分』は
自分のかつてない『味方』に変わるわけです

   

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