うしろの正面だあれ

もうほとんど回復したなと思ってもいたし
生活もそこそこ1人で賄えるようになったが

でもたった一つだけ
不都合で不便だなあと思うことがありました

 

それは、いつも四六時中、24時間
頭が休まらないということ

いつも何かに急かされているような感覚で

高之瀬から『もっと休みなよ』とか『ゆっくりでいいんだよ』
と言われても

プライベートで休むとなると
そわそわして休まらない

じわじわと何かが背後から迫ってくるような感覚で

何もないとわかっているのに
どこからか、ものすごく責め立てられているようで

当たり前だけども眠ることも難しくて難儀しておりました

 

もう、自分ではトラウマはほとんど無くなったと思っていもいたけれども

でもこの身体感覚がおかしい感じになるのは
何かがあるのかもしれないけども
でも、それが上手く言語化できない、そして休む感覚がわからない

 

『これが、ゴール地点ってものかもしれない』
と半ば諦め気味で
『生活できるようになったんだからこれでいいか』

と思っておりました

 

 

そんな中、お付き合いで
『仕方ないなあ』と始めたものの一つに
ピラティスがありました

ピラティスは元々はジョゼフ・ピラティスさんが
20世紀初頭に身体(と心)の総合的なバランスをとるために開発したメソッド

実はリハビリから派生したものなのです

 

ピラティスさんはご自身が病弱だったのもあり
元々身体をどう使えばいいか・・ということに興味がありました

ある時第一次世界対戦中に捕虜となってしまいましたが

収容所で暇つぶしに眺めていた猫たちが頻繁にストレッチをすることを眺めていて、その猫たちがいかに敏捷に動くかということを知り

猫たちの動きからヒントを得て
筋肉を伸ばす一連のワークを考案しました

病院のベッドを荒削りに作り替えて
ワークできるオリジナルの器具を創り出したのです

 

その器具を自身の身体で試した結果に満足したピラティスさんは
他の捕虜たちにもそれを使わせて
結果
周りの囚人たちはスペイン風邪が流行った時でさえ
誰1人病気になることがなく

戦争が終わった時は、戦前よりも健康になっていたと語り継がれているものなのです

 

高之瀬が、『あそこが痛い』『ここが痛い』と
やれいつもどこかしらを痛めているので

それならばピラティスでも通うかい と始めたものなのですが

マンツーマンレッスンで通い始めて

 

さて、高之瀬はともかくとして

私が効果を感じてしまったのです

 

効果・・というより
『いかに自分の身体を動かせていないか』という事実に気づいてしまったのです

 

そもそも解離性同一性障害、や解離性障害は
身体のどこかしらに記憶と感覚を飛ばすというシステムなようにお見受けしています

あまりに辛く酷い記憶や、感覚を
脳では処理しきれないので

身体の一部分に飛ばすということがよく見受けられます

解離性障害の方は、ほとんどの方が
どこかしの身体に何か違和感を抱えるもので
その部分で身体と脳が連動していないのです

連動してしまったら脳と繋がってしまうので

敢えて身体に飛ばした記憶と感覚を切り離す

 

ピラティス自体は、ストレッチなので
ゆっくりと身体を動かしたりなのですが
その先で
いざ、その身体を使って自由に動かしてみよう・・となった時に

解離の感覚が一気に押し寄せてきてしまったのです

身体を動かして良いと言われても
動かせない

まるで割り箸を、空缶に刺して
逆さまにしてカラカラと回しているような感覚で

全く頭の指令と
身体が連結していないのと共に

『身体をこう、動かす』という指示自体が
脳で記憶できない

 

これはもうパニックというより

急に青ざめた感覚になり立っていられなくなってしまい
へたりこんでしまいました

何かに触れて(気づいて)しまった・・・!
という感覚がありました

 

解離性障害を治癒させる
すなわち失われた記憶を繋げる際には
この絶望感のような感覚はスタート地点であります

もしかしたら
この長年の、背中から後頭部にかけての
硬い痛みがなんとかなるのかもしれない

 

しかし、道のりは
そう、簡単ではありません

何より、その固まっている記憶にどうアプローチするかということを
散々やってきたのですが

もう、その部分は『応えない』のです

というより、もう『人格』として成立してしまっており

こっちが働きかけると言っても
赤の他人に、どうにかお願いをするようなもので

その赤の他人が『話をしたくない』と言ったら
話もできない

もちろん、何かしらの『感覚』は伝わってくるのだけれども

その伝わってくる感覚は『不快』とか『恐怖』とか
『怒り』とかであり

また、人格自身も『知能』があるので

こちらが『何をするのか』ということをお見通しなのです

 

クライエント様には
ある程度まで行ったら、こちらの治癒の方法をお伝えしますが
でもそれでもまだ上手く伝えられない『非言語』の部分があるのですが

それを私がおこなうところ
すなわちカウンセリングの一部始終を見ているわけですから

その方法を理解しているので
とにかく尻尾を出さないのです

 

なので、私も含め
先生方もとにかく『静観』すると決めておりました

そしてひたすらに、こちらを『観察させる』ということで
なんとか信用してもらえるようにと行動する

それでも、観察している方の根気強さは並大抵ではなくて
ずっと尻尾を出さないでこちらを観察しているので

こちらもボロが出てくるのですが

それでも、ボロを隠さずに
ただひたすらに観察させておりました

 

どうやら、私の人格の1人は『女性』に特に思い入れがあるようでした

女性と仲良くなりたいのだが
怖くて仕方ない

・・・母親が原因ではありましたが

年上の女性を見ると
仲良くなりたい
でも怖い・・

みたいなものがあるようでした

 

そして、それを私も薄々気づき始めておりました

なんだか女性と仲良くなりたがっているようだ・・

私は今までの人生で、あまり女性と親しくなるということが少なく
どちらかというと男性の方が親しくなりがちで

女性の友達が欲しいなあと思っていたのですが
なんだか途中で上手く関係性を築けないところがあリました

そんな折に
新しく紹介されたカウンセラーの先生が女性だったのです

治療を始めて数年が経ち
半ば、これがもう回復の最終段階なんだろうな・・と思っていた矢先に
その女性の先生と出会ったのですが

 

なんと、『初めまして』と挨拶をした時に

腹の中から
拍手喝采が聞こえてきたのです

 

『え?何これ』と

自分の腹の中での喜びの喝采の声を聞きながら

でも表面は
しれーっとした顔で
先生と挨拶を交わして

帰り道に、私は何度も首を傾げて帰ったのもいい思い出

 

そこから何年も
その先生と話をするけれども
一向に世間話ばかりで

意識上の私は『これで何か変化があるのだろうか・・』
と思っていたのだが

ある時に
多方面から
急に波が押し寄せてきたというか

ピラティスも
そのカウンセラーの女性の先生も
私の普段からの『休むこと』への挑戦も
『怒り』も

高之瀬の環境も

私を取り巻く環境も

何か、全てが合致してきたような感覚があり

 

そうしたらば
急に

『時期になった』という声がしたのです

そうしたらば
ピラティスで、それまで動かなかった骨が
一斉にミシミシと軋み出して

痛くて痛くて仕方ないが

それでも動こうと
骨が寝ている最中に動き出し(全く眠れないが)

すると悪夢を一気に何ヶ月も毎日見続けて
(しかも同じ悪夢で毎日ブルーシートが掛かった現場が見える)

フラフラになって

もう、これでは壊れてしまう・・となったときに

まるで
お風呂の中に
空気を入れた桶を反対にして沈めていたものが

桶を水中でひっくり返したら

ボワッと空気が水中から上がってくるように

記憶が
ボワッと出てきたのです

 

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何度も体験しているけれども

解離性障害というのは、記憶が戻ってくるということが
多々ありますが

記憶が戻ってくるというより

感覚を伴った記憶が戻ってくるという方がしっくりくるような気がします

 

それはまるで
『遠くに漂っていた記憶が、自分の(中に)もとに戻ってきた』
という感じなのだけれども

記憶が戻る前の段階というのは

どこか昔の自分が
セピア色だったり
もしくは、コマ送りのギクシャクした動きをしていたりするのを見れるようで

『今の自分と連動していない』
というのがポイント。

連動していないので

自分というものを語ろうとすると
他人のことを話しているように、周りには見えてしまったりして

なんだか変わった人・・みたいな印象を持たれてしまったりするし

そして
何かの動きをしようとすると
もちろん身体と記憶が一致していないので

どこをどう動かしたら
身体の部分が動くのか?

ということがわからなかったりするのです

 

いわゆるチックなどと言われる症状も
よく見ると
トラウマを抱えていたりするところからの不随意運動だったりすることもあります

解離性障害、解離性同一性障害の人は
自分が『解離』とはわかりにくいものです

なにしろ記憶が飛んでしまうので

思い出せるところをご本人なりに必死に繋げて
なんとか『自分』を創り上げていることが多いのです

なので、なかなか治療に結びつきづらいのと共に

相性が良い医師や、カウンセラーに出会うということが
治療の一番のキモだったりします

 

カウンセリングで、よく『早く治したい』と言われるのですが

もちろんご本人様は金銭的・体力的・時間的な問題で
早く治したいと思われるのですが

実は背後で、『そんな問題なんて関係ない・・』

違う人格の方がいらっしゃることが多いので

なんとも難しいところであります

 

私個人としては
背後の方がたも『いち個人』としてお会いしているつもりです

消したり
去らせたりする存在ではないと思っております

だって、人は誰でも『無視』されたら悲しいと思うのです

なので
表上でお会いする方とは別に

実は、背後の方々とお話ししていて
そちらを優先することもあるのです

   

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