メリークリスマス

せっかくのクリスマスだから

何か ひとつ 素敵なものを
プレゼント出来たらと

12月になってから
ずっと考えていたのだけれども

クッキー?
キャンディ?

いやいや そんなもんではないと

なので今夜は
お話をひとつ

わたしの クリスマスイブの 時のお話で

あれは小学校2年のとき

当時 わたしは
盗み癖が酷く

友達の玩具などを 握りしめ
持ち帰ってきてしまう子供でありました

もちろん
上手に盗めるわけでもなかったので

周りの子供たちからは
疎んじられ 嫌われておりました

しかし やめられなかった

周りの子供たちのもっている玩具は
とても綺麗で可愛らしく ピカピカしており

そして親の愛情が まるで そこに在るような

そんな玩具をもっている子供たちは
とても愛されているような感じだった

対して
私の玩具は

箱で作ったお人形の家や

ちぐはぐな玩具ばかりで

あっても
数個しかなく

いつも汚い私の手で触るから
薄汚れており

意地汚く みすぼらしい
まるで 私そのもののようでありました

だから
いつも 綺麗な その愛情の結晶のような
新品で美しいものを見ると

絶対 手に入れなければと

いつのまにか 握りしめ
それを持ち帰ってきてしまい

ひとしきり満足いくまで遊ぶのですが

外に持っていくこともできない
盗んできたものを見て 溜息をつくのでした

自分でも わかっていました

なんで
こんなに盗んでしまいたくなるのか
不思議でならなかったと共に

きちんと 悪いのだとも理解していました

しかし やめられなかった

 

そんなある日がクリスマスイブでありました

当時
友達もいない私が熱中していたのは
B.B弾を集めること

道端や 山に落ちているB.B弾を
ひたすら集める遊びをしておりました

それらは
山や道端に落ちているときは

宝石のようにピカピカしており
一粒発見することに 私は 達成感で
熱中しておりました

 

しかし
その日 近所の男の子が

山ほどの そして 色とりどりの
B.B弾をもっていたのに
出くわしてしまうのです

ビニール袋にどっさり入ってる新品のB.B弾

美しくて あまりに綺麗で

わたしは いつのまにか
見つからないように 素早く
それらを 両手に一掴みし

そのままポケットの中で握りしめながら
家に走り帰りました

バタバタと帰ってきて
両手に汗でくっついてしまったB.B弾を
一粒ずつ箱に入れている私

焦って 取るのですが

パラパラ パラパラと
手から 落ちる 色の粒たち

そこに母親がちらっと
部屋に入ってきたときと共に

チャイムが鳴り

その男の子たちが
凄い勢いで

B.B弾が盗まれた!と 言いにきたあたりから

私は記憶がありません

 

夜になり

母親から 散々折檻され
「そんな子には サンタは来ないね」
と言われたのと

父親からの
「パパは悲しいよ」と言われたこと

そして

なんで わたしは こんななんだろう

ということと

そりゃ こんな子には サンタは来ないよね

と酷く 醜いような感覚になったのは
覚えています

 

朝になり

サンタなんて来てるわけないし
と グズグズする私が

ふと 見ると

そこには テーブルの上に
プレゼントの箱が ありました

その 大きな箱に入っていたのは
玩具の タイプライターでありました

こんな私に
サンタクロースはプレゼントを持ってきてくれた

サンタクロースは 私のことを
許してくれたのかと

声も出ない私が
やっとの思いで開けてみますと

一番上に
その玩具のタイプライターで打った
サンタからの手紙がありまして

そこには こう 書いてありました

「もう わるいことはしないでね」

 

 

私はそこから 盗み癖がなくなりました

何が起きたのかはわかりません

サンタの正体がわかっても
私は
一切 盗りたいと思う感覚が消え去ったのです

 

毎年
この季節になると

私は 昔のわたしを思い出し
ちょっとだけ苦い感覚にもなるのですが

私が ひとに
プレゼントをしたいのは
こういう理由があります

サンタからの
プレゼントで 私は 変わった

私はそこに
なにか ヒントがあると思って生きてきました

 

見捨てない存在がいるというだけで
人は変われる

そして
それは 自分の中にある

 

今夜 貴方に素敵な奇跡がありますように

メリークリスマス

 

乙原