『はてしない物語』もしくは『モモ』をお読みになったことがありますでしょうか
この物語の作者は 『ミヒャエル・エンデ』
エンデの父親は画家であり当時ナチスから 退廃芸術家 の烙印を押されていましたが
そんな彼の父親の描くこの絵はまるで
絵から 音が聴こえてくるかのような
風のような音
そんな 音というものを
絵によって表現した画家だったように思えるのです
そんな
素晴らしい才能をもつ親からうまれた
素晴らしい才能をもつ子供として育った エンデは
学習面では中高一貫教育校をを落第し 河に飛び込んで死のうと思ったらしい
しかし 14歳から 詩をかき始め
そこから演劇にたずさわり 俳優から 歌や小劇のシナリオを書き
そして 友人の勧めもあり
絵本の執筆を始めたのだといいます
そうして 42歳で『モモ』
50歳で『はてしない物語』を完成させたた彼は
60歳のときに 『はてしない物語』の翻訳者だった日本人女性と
結婚しています
親日家としても知られる彼の本の
代表作の『はてしない物語』
私は これが ただの本とは思えないのです
メタファーと無意識の為せる本
主人公は太った 勉強の全くできない 顔色の悪い
虚言癖のある少年です
学校では臆病者で通り
自分で作った話を独り言でいってしまう為
「くるくるぱあ」といわれていると書かれています
そんな少年が 物語の中に入って織りなす 壮大で 勇敢なストーリー
さて どんな勇敢さと智慧に満ちた冒険をするかは
本をよんでいただきたいのですが
この本には エンデのとても素敵な ある仕掛けがしてあると
思うのです
それは『自分の翼を取り戻す』という仕掛け
読んだ人 おそらく全員の無意識に
羽が生えるよう
綿密に緻密に 練られた各構成に散りばめられたそれぞれの 物語は
とても素晴らしい色彩を帯びており
まるで 光の パレットのようなのです
目も眩む感覚
そして翻訳者でもある奥様の日本語への訳し方が とても美しい
まるで 韻を踏んだかのような
読む人の呼吸に合わせてくれる文章で
息苦しくはなく
絶妙な漢字と ひらがなを使い
パッと開いたページは どこも
字の羅列ですが しかし 絵画のような雰囲気があるのです
本を読むだけなのに 五感をフルにつかう感覚の本というのは
あまり無い気がするのです
そうして
苛められ 感覚麻痺になりかけている 主人公が冒険するにつれ
主人公は どんどん 失われた感覚を取り戻して行き
自分の欲求というものも 満たしていく過程をふみます
その欲求とは 自分を受け入れてくれるという感覚を
味わうこと
なので主人公は ファンタジーをどんどん周りに 与えていくのです
なぜなら
周りがそれを欲するから
しかし ひとつ物語をつくり出すごとに ひとつ ひとつずつ 失われていく記憶
嗚呼
まるで 今 私たちの 目の前にある 世界のようだと
大人になり
カウンセラーとして生きている私に
トラウマとはなんなのか
回復とは
幻想とは
無意識とは
よく小さなころは簡単に行けた
あの こころの深淵に 腰掛けたかのような感覚
ちなみに 私の好きな場面は
主人公が 母親に似た 頭や体に 花や果物がなるおばさまのもとで
お腹いっぱいになる場面
おばさまが 主人公に 安心と 美味しい食べ物と
優しい眼差しと つつみ込むようにお話をしてくれる シーン
なんでこんな僕にここまでしてくれるのかと問う主人公に
幼い子供には 母親がお乳をあげるでしょ!
と 明快な答えで顔を輝かせ 頭に花を咲かせ 喜ぶおばさまのもとで
飢餓感を癒され
徐々に 自分の望みが 芽生えてくる下りは
トラウマ治療に通じるものがある…と意識で捉える自分もいますが
無意識では
あの頃 この本を読んでいた私が
今の私と とうとう繋がったのだと
あの頃 私は この本は 秘密の本なんだ!と
思ったわけがようやく 今 繋がったのです
大人が 初めて読むにも いい本です